NHK、Eテレで夜10時からやっていた「古典芸能への招待」を観る。
狂言「鐘の音」、語「那須与市語」、そして能「隅田川」の三本立てだ。
語「那須与市語」は平家物語の扇の的のシーンを、野村万作が独りで巧みに語り手、判官義経、与市等の四役を巧みに演じ分ける。その語りや所作も相俟って、躍動感すらあり、眼と耳で観客を飽きさせない。
また、能「隅田川」は、人買いに攫われた我が子を追って、京から東国の隅田川に差し掛かる母親の話。
前半には、台詞や謡の随所に伊勢物語からの引用がある。
古典を引用して、場面と場面をリンクさせるという方法は、今以て採られている手法であるが、やってみると中々難しい。なまじっかな知識では、作者の単なるひけらかしに終わってしまい、場面や作品自体を重層的に演出することに繫がっていないことが、自分の際には多々ある。
無論、能という藝能がそもそも色々な前提的知識を鑑賞する側に要求するものであるのは、自明であるが、しかし、それは古典的教養を血肉とした者が作し、そして演じるのであるから、その厚みは自ずと効果を表す。
そうした点に関心しつつ、単に知識として記憶するばかりではなしに、それを自身の血肉とし、また自在に加工して効果的にアウトプット出来るよう精進することが必要だと感じた。アマチュアな表現者であっても、また、日々を生きる身としても。
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