奥津城まで

所謂日記だ。ブログには何度もトライしては挫折してきた。出来ることなら長く続けたいと思い、上のようなブログ名にした所存。

モダン・ホラーの帝王生誕祭

九月は、古語で何と云いましたっけ?

皆さん御機嫌よう。偏頭痛が酷かったり、数箇月に亙って咳に悩まされたりしていて、それでも否応なく日常の波は襲ってくるので、それを辛うじて避ける毎日、皆様は如何お過ごしでしょうか?

もう九月も終わりだ。中々コンスタントに更新出来ないのは、自分の懶惰さにあるのだが、まァ飽くまで個人的なブログなので許したい、自分を。

世間は悪い文明だから粉砕すべし。とか、「オーノー、キラッと閃かない」とか云っているこの頃だが、自分以上に、この期に及んで内外問わず問題山積の状態であるにも係わらず、解散総選挙を選択したりする与党がいたりと、周りは自分以上にクレイジーな様相を呈している気がする。他に投票する所がないから——と云う極めて消極的な行為で、某与党が集票するのは果たして如何なものか。まだ蓋を開けてみなければ結果は判らないけれども。

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シロウトの身の丈以上な政治的ボヤきは措いておくとして、来る9月21日は、スティーヴン・キングの生誕祭らしい。大体自分の父親と同じ世代だ。それでも毎年コンスタントに新刊が出るのは凄い。緑内障を患っているらしいが、それでもここ数年、『デュマ・キー』から見ていてもかなりのヴォリュームのものが刊行されている。『ドクター・スリープ』、『ミスター・メルセデス』も上下巻だ。

しかしながら、自分はキングの近作の熱心な読者ではない。お気に入りは 不評絶版(新刊でないことが不評と云う意味で)の『ファイア・スターター』であるし、それとは別に傑作は『セイラムズ・ロット』だと思っている。

そうは云っても、「ダーク・タワー」シリーズが愈々映画化と聞いて、角川文庫から新装版として刊行されている件のシリーズは購入中だ。新潮文庫で持っていたが、以前にも書いただろうか、引越しの際に売ってしまって大変後悔している。原書のペイパー・バックに添えられた挿絵が、素敵だったからだ。

その角川文庫版も、残す所、後1パート『暗黒の塔』だけだ。

超技術文明が滅んだ後、再び中間世界を統一した偉大なるアーサー・エルド(ペンドラゴンではないよ)王の正統なる子孫、最後のガンスリンガーであるローランド・デスチェインの、黒衣の男を追うことを端緒とした暗黒の塔への旅路は、如何なる結末を迎えるのか。そして、塔に鎮座する深紅の王——クリムゾン・キング(バンド名でもスタンド名でもないよ)モルドレットとの対決の行方は……?

と、 超流感で人口が減り、荒廃したアメリカも斯くやと云った中間世界と終焉世界を中心に、孤独な拳銃使いは仲間を得、そして失い、塔を目指す。それが、彼の運命だからだ。

そして、本を再読する度に、そうした永劫に続く輪廻のような、或いは無間地獄とさえ思われるような暗黒の旅路に読者もまた同伴することになる。それは、荒廃した世界にありながらも、悪夢的で魅力的な行程だ。

輝ける悪夢こそが、キングの持つ虚構の力であり、フィクションの魔法なのだ。そして読者は、キングを含め、そうした幾多のマーリンの所業に餓え、それを求めて、再び本を読み始めるのである。

読書の或る面は、人生を豊かにするものではない。それは個人の裏側を照らし、魅了し、それなくしては生きてゆけなくなる極めて依存度の高いものである。

その暗闇の先、角を曲がった所にどんな夢魔が待っていようとも、怯みながら、時にそれを期待して、我々は頁を捲る。それは現世を正常に生きる者の行いではない。

大いなる嘘の中にこそ、我々の最大限の人生の目的があるのだ。

 

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