奥津城まで

所謂日記だ。ブログには何度もトライしては挫折してきた。出来ることなら長く続けたいと思い、上のようなブログ名にした所存。

ハーラン・エリスンの思い出と新刊

世間は明日から盂蘭盆会だ。

そしてオリンピックと高校野球で話題は持ちきりだ——と思う。

残念ながら、お盆は兎も角、スポーツの祭典の方は何方も詳しくは知らないし、今後急に詳しく知ることもないだろう。エクスキューズをしておくが、別段これは二つの夏のスポーツの祭典をdisっている訳ではないので、悪しからず。

 

ハーラン・エリスンは、学生時代に 短編集『世界の中心で愛を叫んだけもの 』(ハヤカワSF文庫)を読んで、新刊も出ないものかと待ちわびていた作家だ。

コンベンションで当時既に大御所だったアシモフを捕まえて、「あんたの書くものは駄目だ」といちゃもんをつけたり、奥さんだか恋人だかを取っ替え引っ換え(品のない表現で申し訳ない)したりと、作家自身が独特であったと読んだのも、上の短編集だったか。

 

幾星霜かを経て、国書刊行会の〈未来の文学〉という叢書から、主にSF以外の短編集『愛なんてセックスの書き間違い』が出ると出版社の広告で読んだ時から、遂に新たな本がでるのかと胸を躍らせたものだ。

 

そして、今月、ハヤカワSF文庫の新刊として『死の鳥』が刊行された。

 

『世界の中心で〜』は、表題作も含め、粒揃いの一冊である。

世界の中心クロスエポンに閉じ込められている〈けもの〉。それは戦争を最大とする争いの中核であり、〈けもの〉と同調するかのように無差別殺人を繰り返し、裁判の席で人類全体への愛を高らかに叫ぶ男。この、時空を超えたリンクこそ、当作の醍醐味であり、それはメタファーという抽象を超え、実際的な暴力への具現化である。世界の中心には〈けもの〉がいる。世界の中心は飽くなき暴力である。しかし、それは高らかに、偽りなく、愛を叫ぶのだ。愛と暴力は世界の中心で表裏一体であり、同質である。

 

その他、宇宙人を薬漬けにして従わせ、地球に復讐に来るジャンキーの話等、ユニークなヴァイオレンスに溢れたセンス・オブ・ワンダーが愉しめる。

 

今作 『死の鳥』は、恐らく雑誌に掲載されたものを纏めたのだろうが、そこまでSF読みではない自分には、どれも未読だ。手許になく確認出来なかったが、『世界の中心で〜』と重複しているものもないと思う。最近、SFからも遠ざかっていた身としては、一つまたSFへと回帰してゆく良い契機となるだろう。

 

想像力は人間本性の能力である。そして、それが生み出す真に優れたフィクションは、イマジナリィでありながら、どこまでもリアルを変える程エネルギッシュだ。

 

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